戻る

初姿 次郎長富士
古田 求 脚本
金子良次 演出

 
【 出 演 】
 
清水次郎長
・・・・・里見浩太朗
 
お蝶
・・・・・杜 けあき
 
投げ節お仲
・・・・・草笛 光子 
 
大政
・・・・・横内 正 
 
大前田英五郎
・・・・・大山 克巳 
 
お縫
・・・・・浅利香津代 
 
深見長兵衛
・・・・・近藤 洋介 
 
森の石松
・・・・・坂上 忍 
 
おけい 
・・・・・伊藤つかさ
 
追分三五郎 
・・・・・有川 博
 
 
 
 
 
 
 

◇ 第 一 幕 ◇

 秋たけなわ、日蓮宗総本山の身延山・久遠寺では、恒例の秋祭りが行われている。
清水湊でその名を知られた清水次郎長は、地元の津向の分吉の誘いを受けて、恋女房のお蝶 と大政、森の石松、追分三五郎、法印大五郎、桶屋の鬼吉ら子分たちを連れて遊山に訪れていた。 常日頃から苦労をかけ通しのお蝶に、せめて祭見物をさせてやりたいという次郎長の 思いやりだった。
 そんな和やかな祭の境内が、一転して修羅場となった。文吉の縄張りを狙う武井のども安 が殴り込みを掛けたのだ。一宿一飯の義理から文吉の加勢をしようとした子分たちを 次郎長は留め、喧嘩の仲裁に入ろうとした。ところが、ども安の手下がお蝶に手を出そうとしたために、 思わず刀を抜きその手下を傷つけてしまうのだった。
 身延山の乱闘で、文吉とども安は捕らえられて島送りとなったが、 次郎長一家はかろうじて追っ手から逃れ、人目を避けて旅を続けた。 役人に追われる次郎長たちに手を差し伸べるものはなく、もともと体の弱かった お蝶は病に倒れてしまった。
 二ヶ月後、次郎長たちは尾張の貸元、保下田の久六の家に匿われていた。久六 はかつて次郎長に世話になり大恩ある身だった。とはいえ、久々に 雨露しのげた嬉しさに、次郎長の久六への感謝の想いはひととおりではなかった。 しかし、亀崎の代官所から十手を預かっている久六は、ひそかに代官の竹垣三郎兵衛 に密告し次郎長を捕らえようとしていた。
 その九六の策略から次郎長たちを救ったのは、次郎長の幼なじみの投げ節お仲 だった。危機一髪、久六の家から脱出した次郎長一家は、お仲の知り合いの深見 長兵衛の元に厄介になることのなった。
 長兵衛は義理人情に篤い人物で、そのためひどい貧乏暮しだったが、女房のお縫 と共に次郎長たちを暖かく迎え入れてくれた。
 長兵衛夫婦のこころざしで、お蝶は医者の診療を受けることができたが、その見立ては 決して明るいものではなかった。
 次郎長は、例えどんなことでもお蝶の望みを叶えてやりたいと思うが、お蝶の 願いはただひとつ、故郷の清水に帰ることだけだった。
 道中が敵だらけなことは承知の上で、次郎長はお蝶を清水へ連れて戻る決心をした。
 子分たちが担ぐ吊り台に乗せられ、お蝶は駿河湾を遥かに見下ろす峠にさしかかった。 故郷に辿り着いたお蝶は、嬉し涙にくれ、自分の死を悟り子分たち一人一人 に声をかけた。子分たちも流れる涙を押さえることができなかった。。

◇ 第 二 幕 ◇

 清水に戻ったお蝶は、まもなく息を引き取った。その葬儀は、菩提寺の梅蔭寺で 盛大に執り行われ、全国から千人にも及ぶ親分衆が集まって次郎長の力を 見せつけた。
 そんな中、大前田英五郎だけが不満な面持ちだった。次郎長に世話になった 保下田の久六が参列していないないことを怒っていたのだ。 次郎長は、詳しくは語らないながらも久六と縁を切ったことを告げ、英五郎 らもそれを受けて久六との付き合いを断つことを約束した。
 そこへ、お縫が息も絶えだえに次郎長を訪ねてきた。次郎長を匿った ことを根に持った久六が長兵衛の家を襲撃し、長兵衛をはじめ子分まで 皆殺しにしてしまったと言うのだ。怒りに燃えた次郎長は、長兵衛の敵を 打つ決意をした。
 次郎長は子分を従えて亀崎の代官所に殴り込み、居合わせた久六はじめ長兵衛の 敵をすべて討ち取った。
 清水の行きつけの居酒屋で、森の石松は亀崎での手柄話を得意げに 並べ立てて、居合わせたお仲に呆れられていた。居酒屋の娘おけいは石松 とは相愛の仲だったが、危険を恐れない石松の無謀さにいつも胸を痛めていた。
 そこへ、次郎長が子分を従えて入ってきた。次郎長は、久六を討つ前に 四国の金毘羅さまに願掛けをしており、無事本懐を遂げたことから、そのお礼参りの 代参に石松を選んだ。しかし、暴れ者の石松が道中で喧嘩をしないよう、 酒を飲まないことと脇差を抜かないことを堅く約束させ、刀には次郎長自ら こよりを結ぶのだった。
 一ヶ月後、遠州小松村で、石松が都鳥吉兵衛らに惨殺されたという 報せが届いた。次郎長は、こよりのしっかりとついた石松の刀に 詫び、都鳥一家を討つ約束をした。

◆ 劇 評 ◆

 この、物語の主役は次郎長なのだが、それを囲むキャラクターがどうしても 話しのメインになってしまい、次郎長の存在感がいまひとつ かけていたように思う。
 が、前半なかった久六を討つ場面を増やし、次郎長の立ち回りが増えたことによって、 芝居全体の、迫力が出た気がする。 また、ラストの本物の水を使った大滝の演出もだんだんと派手になり、 水しぶきがあがる光景が場を盛り上げた。
 また、熱演が光ったのが石松を演じた坂上忍だ。表情豊かに、気持ちよさそうに 石松を演じていた。
 また、一場での次郎長とお蝶の仲良くおしるこを食べる様子も、 観客の笑いを誘っていい雰囲気を作り出していた。