時は将軍家綱の世。
 黄金蜘蛛党と名乗る黒頭巾一味が、上信越 国境附近に出没して、江戸へ向う御公儀佐渡金輸送隊を襲撃 する事件が頻発、家綱の頭を痛めたが、事件の探索には、京月獅子之助 が任命された。
 獅子之助は、実は家綱とは乳兄弟の間柄、家綱の乳母飛鳥局 を母に持つ身であるが、公儀隠密として輸送団付になっていた友人 藤木辰之進が一味のために命を落としたのを目の当たりに見て、既に 今日あることを予知していた。家綱より黄金に輝く獅子の紋と、白鉢巻 の衣裳一揃を拝領した獅子之助は、勇躍江戸を発つ。お供は、彼を慕い、 兄の仇を果たそうとする萩乃と、やくざ素っ飛びの勘次である。
 信州上田城で、藩主眞田春幸とその家臣達から、輸送隊消失の場所を聞いたが、 うなずけぬのは、次席家老小市将監の様子である。
 坂本宿へ向かう途中、獅子之助は深編笠の奇怪な武士に出会ったが、そのまま 誘われるように、とある一軒家に行きついた。
 最近、附近の鉄砲鍛冶が、次々と何者かに誘拐されるという新事実を一軒家の 鉄砲鍛冶親子に聞いた獅子之助は、勘次を鍛冶屋に仕立て、自分は途中で捕えた 黒頭巾の一人に化け込んで、一味のかくれ家に入り込んだのである。  かくれ家の地下は、鋳物工場となっていた。彼を見破ったのは誰あろう、 いつかの謎の武士神坂小太郎だった。
 神坂小太郎とは、実は島原の乱に天草四郎の片腕として活躍した軍師神坂玄内の 一子である。死を伝えられた玄内は、島原の仕返しに、徳川に一矢を報いようと、 その執念の果てには、天下を乗取ろうと企む黄金蜘蛛党に利用され、地下の作業で 火薬作りに余念がなかった。ずらりと並ぶ鉄砲、積み上げられた火薬の箱、幾十万両 の贋金の山等々、今更ながらに、一味の悪辣な行状に眼をおおう。そして一味の中に入り込んで 父を救おうとする小太郎と固く手を結び、一味の潰滅を期したのであるが、未だに不可解 なのは、首領とおぼしき宗十郎頭巾の正体である。
 一方、萩乃はかねて獅子之助が道しるべとしておいた穴開銭をたどり、かくれ家附近 まで訪れるが、一味に囲まれ、短筒を発泡する。その音でかけ寄ってきたのは、江戸で 留守を勤めている筈の勘次の妹お町だった。彼女もまた萩乃と同様、獅子之助恋しさに、 三人の後を追ってきたのだった。
 早速二人は、関所にかけつけ番頭沼田利基に、一味のかくれ家を告げるが、帰途、 突如現れた黒頭巾に捕らえられてしまった。
 二人がおとりになって、獅子之助もまた捕らえられ、三人は地下の座敷牢にとじ込められる。
 ニヤリと笑った隊長の宗十郎頭巾が愈々最後の佐渡金輸送隊を襲撃する命を下した。 どっと繰り出す黄金蜘蛛党の騎馬隊が、目的の窪地で輸送隊を取りまいた。火を吐く 鉄砲、またまた輸送隊は全滅かと思われたが、この時、一味の背後にサッと立った一人の 快男子、白装束に金獅子紋の鉢巻姿、京月獅子之助である。
 「黄金蜘蛛党奴、汝等の悪業、ここに見極めたり。徳川家綱公の命により、 世の人になり代って、正義の士、京月獅子之助、今こそ汝等をこらしめん、いざいざ!」
神出鬼没!捕われの身の筈の、獅子之助がここに現れたのである。
慌てふためく黄金蜘蛛党に、上田藩飯塚内記一隊の鉄砲が轟然と火を吐いた。 「退け、退け・・・」首領の声に散を乱して逃げる一味。その有様を一隊を率いて 丘の上から見ていた宗十郎頭巾の男は、サッと頭巾をかなぐり捨てた。それは意外、 小市将監である。そして何思ったか潰走する一味の前へ飛び出し「黄金蜘蛛党の首領、 神妙にせい」と、配下と共に一斉に斬り込み、首領の男を一刀のもとに斬り伏せた。 黄金蜘蛛の面が二つに割れて、血汐吹いた顔は関所番頭の沼田利基。
 獅子之助を先頭に駆けつけた飯塚内記の前に膝まづいた将監は、「黄金蜘蛛党の首領を さし止めましてございます。」と報告する。それを見ていた獅子之助、「将監、この場に 及んで、苦しまぎれの茶番狂言、見苦しいぞ。黄金蜘蛛党の首領の上に、更にそれを操る バ謀叛人の居る事は、この獅子之助がハッキリ知って居る。」正体を見破られた将監、 今はこれまでと、いきなり獅子之助に斬りつけた。サッとかわした獅子之助、正義の 一刀は将監の肩先深く。
 遠く背後に上田城を望む街道筋を、獅子之助、萩乃、勘次、お町の一行の懐しの 江戸へと急ぐ姿が、次第に遠ざかって行く。
(当時のプレスシートより)