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杉山義法 脚本
金子良次 演出

 
【 出 演 】
 
大石内蔵助
・・・・・里見浩太朗
 
大石りく
・・・・・野川由美子
 
すず(りくの母)
・・・・・赤木 春恵
(11/01〜11/21)
 
すず(りくの母)
・・・・・丹阿弥谷津子
(11/23〜12/14) 
 
堀部安兵衛
・・・・・勝野 洋
 
瑶泉院
・・・・・こだま 愛
 
浮橋太夫
・・・・・高汐 巴
 
大石主税
・・・・・片桐 光洋
 
矢頭右衛門七
・・・・・新田 純一
 
小野寺十内
・・・・・下川 辰平
 
 

◇ 第 一 幕 ◇

 元禄十四年三月ここ播州赤穂の瀬戸内海に面した浜辺には、広大な塩田が広がり、 ここから取れる良質な塩は、浅野家の財政を潤し、他藩からもうらやまれる恩恵を授かっていた。
 昼行燈と仇名される家老の大石内蔵助は、藩政が一息つけば、領民と共に塩づくりに汗を流す、 明るく延びやかな気質が藩士、領民の心をとらえ信望も厚かった。今日も吉良の間者らしき者が、 塩の製法をこと細かに書き留めていたと、藩士らが切り捨てようとするところを内蔵助は、「塩は 天の恵み・・・赤穂の塩の質がいいのは、海の水一滴一滴ををが血潮の如く大切に扱い、領民が上下心を 一つにして塩作りに励むのみ、ほかに秘伝などあろう筈がない・・・」と間者の縄目を切り命を助けてやるのだった。
 元禄十四年三月十四日、江戸城松の廊下において勅使饗応役の藩主・浅野名匠頭が、高家筆頭吉良上野介に 刃傷の及んだ大事件が赤穂の内蔵介に知らされたのは、四日後の三月十八日であった。
   風さそう 花よりもなほ我はまた
           春の名残をいかにとかせん
 内匠頭の辞世の句を前に、亡君の無念を察し涙する内蔵介。藩主・内匠頭は、即日切腹を仰せつけられる一方、 吉良上野介にはいっさいのお構いなしという公儀の裁定に、赤穂城では藩士達の連日連夜の評定が続いている。
 公儀に異を唱える籠城か殉死か、穏便に城明け渡しをすべきか・・・
 内蔵助は、只一人で大石家の土蔵の中に籠もり、三百余名の家臣とそれに倍する家族達を抱え、なにをなすべきか 悩みに悩む。そして二日後に、蔵から出でると、妻のりくに「今この時から、内蔵助は亡きものと思うてくれ!」と、 その心中を伝えるのであった。
 元服前の松之丞も、殉死の時はお供をしたいと父内蔵助に訴えるが、意外にも、内蔵助の決意は「城明け渡し止むなし」であった・・・。
 江戸から馳せ参じた堀部安兵衛・大高源吾ら籠城派は、城受け取り警護の竜野藩士に囲まれた城中において尚、 内蔵助に籠城をすべきと迫る。
 「身をすててお家に報いるは、必ずしも今日のみに限ったことではない。必ずや後日、亡き殿のご恩に 報いる路があろう・・・」と誰にも明かさぬ心中を胸に赤穂を旅立つ内蔵助に、りくは「あなたの信ずる道ならば 何処までもついて参ります」と寄り添うのであった・・・。

◇ 第 二 幕 ◇

 赤穂城明け渡しから一年後の元禄十五年、春。京は伏見撞木町、妓楼「笹屋」には、浮橋太夫 を相手に、大尽遊びにうつつをぬかす内蔵助の姿があった。江戸表から内蔵助の本心を聞きだすべく 赤穂の浪士が笹屋に押しかけるが、亡君の一周忌が近づいた今、仇討ちを危惧する吉良方の 間者が、内蔵助の周辺に身え隠れし、目を光らせている気配・・・。酔いつぶれて本心をかくす 内蔵助に、但馬・豊岡から出てきたリクの母スズも「同志の方々が血のにじむようなご苦労を重ねている時に、この有様はなんとしたこと・・・」 と内蔵助にうったえる。
 しかし、内蔵助はスズに「貞女面のリクは見飽きた、豊岡に連れて帰ってくれ」と言い出す始末。 内蔵助を迎えに来たリクと松之丞、抱き起こす松之丞の目にも涙が光っていた・・・。
 久々に家族がそろった山科の大石家閑居にも吉良の間者が忍び入っていた。内蔵助を一途に信じ、なに夫聞かずに明日は豊岡に帰るべく 眠入った夫に別れを告げるリクに、だまって起き上がった内蔵助は床下の間者を一刺しに突き刺す。 驚くリクを抱きしめ「なにも聞くなッ なにも言うなッ このまま豊岡に帰ってくれ」という。心が通じた 喜びにリクは、いつまでも内蔵助の胸に抱かれていた・・・。
 そこへ、江戸からの書状が届く。これには内匠頭の御舎弟・浅野大学様の御処分は、浅野本家に お預けの身となり、お家再興の道は完全に閉ざされたとあった。
 ついに内蔵助の行く道は決まった。その年の十二月十四日の夜。浅野家下屋敷に内蔵助は、亡き浅野内匠頭の妻瑶泉院を訪ねた・・・。

≪ 劇 評 ≫
 14年前、日本テレビの年末時代劇スペシャル「忠臣蔵」で演じた、大石内蔵助。
舞台は、4度目の公演となる。前回と変わっていたのは、芝居が始まる前に「桜の紋章」が 館内に流れ雰囲気を作り出していた。 また、妓楼で遊ぶ内蔵助に進言しに来たのが、不破数右衛門ではなく堀部安兵衛だったところ。 これは、勝野洋の出番を増やすためだったのであろう。 それと、妻「りく」の母と浮橋太夫とのからみのシーンを中庭にしたところだ。 桜の大木や唄いながら内蔵助が駕籠で連れていたれいかれるところなど、 演出的には華やかになったと思う。
 そして、一番の見所、泣き所、元服した主税が「一目この元服した姿を母上に見せとうございました。」 と言って山科を後にして、内蔵助がそれを影で聞いていたりくと最後の別れをするシーン。ここで挿入歌「憧れ遊び」が入るのだが、 前回までは、堀内孝雄が歌っていたが今回は里見本人が歌った。個人的に「ここは堀内孝雄だなァ」とやや不安だったが、 けっこういい雰囲気がでていて、客席は涙、涙だった。