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村上元三 原作
古田 求 脚本
金子良次 演出


  ◇◆◇   出   演   ◇◆◇    

   松平長七郎長頼・・・・里見浩太朗

   おれん・・・・・・・・野川由美子

  お光・・・・・・・・・山田まりや

  野中参之助・・・・・・江藤 潤

  蔦吉・・・・・・・・・東 千晃

  長次・・・・・・・・・丹羽 貞仁

  板倉内膳正・・・・・・鈴木 瑞穂

  寺坂玄朴・・・・・・・成瀬 正孝

  川村又五郎・・・・・・小沢 象

  篠原外記・・・・・・・有川 博

  三宅宅兵衛・・・・・・下川 辰平

  松平伊豆守信綱・・・・大山 克巳

  光松院・・・・・・・・淡島 千景
 
 

◆◇◆  構   成  ◆◇◆ 

【 第 一 幕 】 

プロローグ
「橋のたもと」
(江戸前期・師走の夜)

第一場 
「両国広小路」
(正月二日・昼) 

第二場 
「読賣屋『夢楽堂』の店先」
(続く時刻)

第三場
「料亭の離れ」
(次の日の夜)

第四場
「松平伊豆守屋敷・奥座敷」
(数日後の昼)

【 第 二 幕 】

第一場
「蔦吉の家」
(数日後の昼)

第二場
「光松院の庵」
(前場の数日後)

第三場
「山中の社」
(翌日早朝)

第四場
「板倉内膳正の屋敷・奥座敷」
(同じ日の夕刻から夜)

第五場
「読賣屋『夢楽堂』の表」
(数日後の昼)

 

◆◆◆ストーリー◆◆◆

謀反の疑いをかけられて自害した駿河大納言の忘れ形見、松平長七郎長頼は三代将軍家光の甥でありながら、市井で暮らしていた。
正月、長七郎は居候しているかわら版屋の女主人おれん、守役の宅兵衛らとともに両国広小路に出掛けてきたが、そこで侍に追われた竹坊という子供を助ける。侍の紋を頼りに長七郎が酒井家を訪れると、江戸家老篠原外記が現れた。竹坊を追っていた侍や、家老の様子から長七郎は裏に何か隠されているとの疑念を持つ。
その後長七郎は叔父、松平伊豆守から酒井家に当主の座を巡る不穏な動きがあること、また酒井家には町人として育てられている子息竹丸君がいることを聞く。
竹坊のもとに急ぐ長七郎だったが、そこには既に竹坊の姿はなかった。竹坊の行方は。
悲しい運命を背負った母子に、長七郎自身の母への想いが交錯する。悪を相手に、長七郎の剣が怒りに燃える。


 
 
 

 

◆◇◆感想&解説◆◇◆

久しぶりの長七郎。そして、年齢的にもチャレンジとも言えるこの役柄。
里見さん自身も、「これが最後の長七郎になると思います。」と語っていました。
里見さんは、この久しぶりの長七郎という役柄に今まで以上に力を入れて準備をしているように思えました。若く、そしてキレのある殺陣を見せるための減量。そして、脚本家・演出家との入念な打ち合わせ。「45周年記念、そして新春公演としてのコクをどのように出すか」それが大きな課題。そして、幕があがりました・・・。

プロローグは、松平伊豆守が刺客に襲われる場面。長七郎は、舞台正面からのヒーロー的な派手な登場。刺客を追い払い、花道を唄いながら颯爽と去ってゆく場面もなんとも色っぽいです。
場面は一転、賑やかなお正月の場面。宅さんとおれんさんの登場で、長七郎らしい雰囲気が盛り上がります。
そこへ、子供を追って、またも刺客が・・・。おれんさんの啖呵が冴え渡ります。そこへ獅子舞の助っ人登場。舞っているのは、長七郎と山田まりや演じるおみつ。刺客を追い払い、会場の観客を巻き込んで三本締めを・・・。「最初から締めてしまうのか?」という気もしますが、これで、一気に観客を引き寄せます。なんともお正月らしい演出です。
子供を助けて、夢楽堂で事情を聞く長七郎。子供を相手になんとも穏やかなやさしい表情がとても素敵です。
そこへ、東さん演じる蔦吉が子供・竹丸を迎えにやってきます。襲われたと聞いても酔ったふりをつづける蔦吉を見て長七郎は、何かがあると察します。
長七郎は伊豆守から呼び出され「早川藩には、竹丸という市井に暮らす後継ぎがいる。その命を救って欲しい」と・・・。「あるお方が、早川藩の行く末を救って欲しいと願っている」と伝えられる。
長七郎は「早川藩の為ではなく、幼子の為ならば・・・」と、お家騒動を買って出る事に。
そのお方とは・・・。淡島さん演じる光松院。
光松院は長七郎の実母で、長七郎とは幼い時に別れたきりだった。
そんな中、竹丸がさらわれます。山中に呼び出された、長七郎らは竹丸の身分を証明する金蒔絵の「小刀」と引き換えに竹丸を救う事に。
そこへ「小刀」を見分ける役目として連れてこられたのが、光松院。驚きを隠せない長七郎と宅兵衛だが・・・。そして、「小刀」を差し出すと、光松院は「間違いない」と。
実は、この「小刀」は、長七郎の父、忠長が長七郎に持たせた物だった。それを承知の上で、光松院は長七郎と竹丸を救うための証言をした。
と、その時。長七郎をかばった光松院が銃弾に倒れた。嘆き悲しむ長七郎・・・。
幼い時に悲しい思いをさせたと、長七郎にひたすら詫びる光松院・・・。
「母上・・・一生分の愛を・・・一生分の母の愛をくだされた。」
この光松院とのやりとりでは、里見さんの狙いどおり45周年の新春公演としてのコクが十分出ているように思います。
場面は変わって、薪能見物をしている黒幕、若年寄・板倉内膳正と早川藩江戸家老・篠原外記。
能の準備がととのい、能面をかぶった役者が登場する・・・。
なかなか舞わない役者に「舞わぬか!」
「悪人退治の剣の舞をひとさし・・・・」
能面を取ると長七郎が・・・。
この登場では、少し舞ってほしい気もしますが、中に着物を着て刀を差して入る為、難しいかなぁとも思います。それにしても、とてもカッコよくて素敵な登場です。
「俺の名前は引導代わりだ!迷わず地獄へ落ちるがよい!」
そして、長七郎の二刀流が冴え渡ります。殺陣もかなり派手で迫力十分。まだまだ里見長七郎健在です。
そして、竹丸がいよいよお城に上がる日がやってきました。しかし、母・蔦吉の姿が見当たりません。ついに、竹丸の準備が整い、迎えがやってきました。
そして、長七郎がニヤニヤしながら戻ってきます。
「蔦吉はもう来ない。竹丸には新しい母親が来る。」
それを聞いて「見損なった!」とおれんさん・・・。
それでも、なにやら長七郎はニヤニヤしています。
おれんさんと長七郎の掛け合いも最後の見せ場です。
「お八重の方様!」そこへ、蔦吉が着飾ってやってくる。
長七郎の計らいで、母子別れることなく、お城に上がる事になったのだった。
長七郎に「おじちゃん、おとっちゃんもおっかちゃんもいないんだろ。寂しくなったら、いつでも遊びにきておくれ。」という竹丸。
「その優しい気持ちをいつまでも持ち続けてください。」と長七郎。
竹丸をだっこして、幕が下ります。

今回の長七郎は母子の情を、蔦吉・竹丸の母子を光松院・長七郎の母子に重ね合わせたストーリー。里見さんが語る時代劇の真髄はここにあるのですね。
悲しい中にも、なにか人間としての大切な部分を思い起こさせるストーリーと表情豊かな里見さんの演技にとても感動しました。
そして、獅子舞や三本締めなど、お正月らしい見せ場が目立ったのも特徴です。
しかし、今回は場の合間が長いような気がしました。幕前の芝居もほとんど無い為、その間がすこし演出が欲しいなぁとも思います。
しかし、その場の合間を楽しませてくれるのが、「長七郎」のBGM。
今回も、テレビを思い出させるBGMを使用して、長七郎の雰囲気たっぷりで舞台が進行してゆきます。
なにはともあれ、里見長七郎はまだまだ健在!若くて、カッコよくて、やさしくて、まさに里見長七郎。二刀流もあの納刀も健在です!最後なんて言わず、次回も期待します!永遠に大切に守って欲しい役ですね。