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ジェームス三木/脚本・演出
中嶋八郎 / 美術

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◆  出  演  ◆

羽柴筑前守秀吉・・・・・・里見浩太朗

徳川家康・・・・・・・・・・林 与一

お市の方/茶々・・・・・・酒井和歌子

ねね・・・・・・・・・・・・・・音無美紀子

柴田勝家・・・・・・・・・・伊吹吾郎

仲(大政所)・・・・・・・・・浅利香津代

大村梅庵・・・・・・・・・・なべおさみ

羽柴秀長・・・・・・・・・山下規介

京極龍子・・・・・・・・・・・北原佐和子

お初・・・・・・・・・・・・柴 とも
 

◇ あ ら す じ ◇

 時は天正10年6月、織田信長公が本能寺の変で非業の最期を遂げられた直後でござる。
さて、秀吉公の知られざる悩みをばこっそりとご披露いたさんと、秀吉公の伽衆・大村梅庵は語る…。
 山崎城の奥座敷で織田家の行く末を案じるねね(音無美紀子)と羽柴秀長(山下規介)。
お世継ぎは次男信雄殿か三男信孝殿かと。そこへねねに大事な話があると羽柴筑前守秀吉(里見浩太朗)、「やむにやまれる事情でお前を離縁したい」。「バカをおいいでない」と怒るねねに秀吉は、「信長公亡き後の天下を誰が治めるか、柴田勝家(伊吹吾郎)、丹羽長秀を出し抜いて大きくのし上がるには今が千載一遇の好機、ならば、ぬきんでた家柄の姫君を正室に迎えて…」と言う。
 その姫君が実は三人の子持ち、しかも後家さんだと聞いてねねは、もしやお市の方はと思う。…秀吉の気は確かかと、それを実母の仲(浅利香津代)に告げる。「またも女狂いか…、しかし首尾よくお市の方をくどき落とせばいたし方あるまい、正室の座を譲っては」にねねは落胆、仏門に入ると…。しかし「これは秀吉のひとり相撲じゃ」との仲の慰めにほっとするねね。
 夫・長井長政を殺され、三人の娘とともに清洲城に身を寄せているお市(酒井和歌子)に、「どうか秀吉の願いを…妻とは離別いたします。胸中は積年の恋の重みに耐えかね……」と懸命に訴える秀吉。その秀吉をお市は「お下がりあれ」とケンもほろろに追い返す。その上信孝に、「お市の方は再嫁いたす。柴田勝家にじゃ…」と告げられる。
勝家は歳はとっているが秀吉よりずっと男っぷりがよかった。秀吉のお市への恋は脆くの破れた。失意の秀吉はお市の代わりに浅井長政の姪・武田元明の妻京極龍子(北原佐和子)を側室に…、よほど後家が好きなんだと仲に言われる。
 天正11年、秀吉は賤ヶ岳の合戦に大勝利を収め、恋敵勝家の北ノ庄城が炎に包まれ、お市は勝家と共に自害、三人の娘を秀吉に託す。秀吉の無念はいかばかりであったか……。
 秀吉はお市の娘、茶々(酒井和歌子=二役)、お初(紫 とも)、お江を引き取り織田長益を後見につけて親身の世話をする。だんだんお市に似てくる茶々に秀吉は熱い思いを…。
だが茶々は父や兄の敵である秀吉の愛を受け入れない…。
 天正14年、徳川家康(林 与一)を懐柔したい秀吉は、妹さと(朝日姫)を妻として家康に与え、実母大政所と共に浜松城に送り込む…。そして謁見の日には、この秀吉に臣従の礼を取り、居並ぶ諸大名の前で秀吉をお引き立てくださいと家康に深々と平伏するのであったが……。

◆  構   成  ◆

【 第 一 幕 】

第一場
「山崎城・奥御殿」

第二場
「清洲城・書院」

第三場
「山崎城・奥御殿」

第四場
「北ノ庄城・天守閣」

第五場
「愛宕山・秀吉本陣」
 

【 第 二 幕 】

第一場
「有馬の湯」

第二場
「大阪城・奥書院」

第三場
「秀長邸・客間」

第四場
「大阪城・奥書院」

第五場
「大阪城・奥書院」

◆  感想&解説  ◆

秀吉=サル
とても里見さんのイメージとは一致しないこの役を、
いったいどのように演じてくれるのか・・・?

物語は、なべさん演じる大村梅庵の案内で進行してゆきます。
「まず、お客をつかむ!」芸人の街・大阪の基本なのでしょうか?
テレビの公開放送ならぬ「拍手の練習」のようなものからはじまります。
「秀吉公は、ことのほか拍手がお好きでな・・・」そんな前振りで幕があがります。
それに答えるかのような大きな拍手で迎えられると、里見さん演じる秀吉も満足げに、
会場を見渡してニヤニヤ・・・。そしてなにやら、ウロウロ・・・落ち着きません。
音無さん演じる、ねねに「離縁してほしい」と打ち明けると「馬鹿をお言いでない!」と・・・
秀吉は、ねねの着物を引っ張ると、ねねも引っ張り返します。着物を放さない秀吉は、ズルズルと引きずられて・・・ねねが着物を放すと秀吉がひっくりかえってしまいます。秀吉はその着物を持ってテクテク・・・(なんだか、とてもかわいいです!)
二人の関係とこの物語のコミカル度を象徴する冒頭の見せ場の一つです。
それにしても、あの着物、一ヶ月もつか心配ですが・・・(^^;
そこへ、浅利さん演じる、秀吉の母・仲が登場します。浅利さんならではの味のある演技で、雰囲気をさらに盛り上げます。
そして、酒井さん演じるお市の方を正室に迎えようと、秀吉のアプローチが始まります。
「妻とは離別いたします。胸中は積年の恋の重みに絶えかね、今にも枝が折れんばかり・・・。
雲であれば今にも雨が降らんばかり・・・」と懸命にお市の方に訴えますが・・・。
「下がりあれ!」「ハエがうるそうて・・・」とまで言われる始末。
いつもは、こんな台詞を並べなくても恋が成就してしまう二枚目ばかり演じている里見さんだけに、これもまた新鮮です。
そして、お市の方は伊吹さん演じる柴田勝家と再婚し、秀吉の恋は脆くも破れます。
秀吉は、お市の代わりに北原さん演じる京極龍子を側室に迎えます。
そしてお市は、賤ヶ岳の合戦で柴田勝家と自害し、三人の娘は秀吉に引き取られます。
秀吉はお市の死を嘆き悲しむところで・・・一幕目の幕が下ります。

二幕目は、有馬の湯の場面から始まります。湯の場面ですから・・・ね。
男性客には、あっと驚かされる場面なのでしょうかね(^^;会場からもざわめきが起きていました。
ここでは、山下さん演じる秀長と中塚さん演じるさとを含め、秀吉をとりまく家族の団らんを描いています。しかし話題は、家康の人質として誰を浜松にやるかという話・・・。
「私が行く」と互いにゆずらないねねと仲。ねねは「私が殺されれば、「おうおうかわいそうな事をした」と涙の一つも流してくれましょう」と柱にすがって、笑いを誘い、「いやみな女じゃ!」と秀吉。
ここでも、二人のやりとりが場を盛り上げます。
結局、秀吉は妹さとを家康に嫁がせ、仲と共に浜松に送り込みます。さとは中塚さんが独特の演技で会場の笑いを誘っていました。
そして、女湯を眺めて「よい眺めじゃな!」と秀吉。
心境としては複雑ですが、もう少し、大胆にのぞいたほうが面白いような・・・(^^;
関白となった秀吉は、林さん演じる家康に謁見を前に、「巨従の礼を取り、居並ぶ諸大名の前で秀吉を引き立ててほしい」と根回しします。
秀長邸で家康を待つ秀吉。ここでの、秀吉の演技にも注目です。上座から、ぴょんと飛び降り、ちょこまかちょこまかと動きながら、謁見での家康とのやりとりを実演し、考える秀吉。そこへ家康が登場。慌てて、手土産げかわりの積み上げた小判を崩してしまったり・・・
上座を譲ろうとする秀吉に家康も譲り返し、二人はクルクルクルクル・・・。
ついには、秀吉はあやまって家康の膝の上に座ってしまいます。里見さんと林さんの息の合った演技に注目です。
そして、秀吉の愛は茶々に向けられます。酒井さんがお市と茶々の二役を演じています。
またしても、秀吉のアプローチが始まり、泣き落とす秀吉・・・ここでもちょっとしたしぐさで笑いを誘います。そして、茶々との間に子が出来、秀吉の喜びの舞で幕が下ります。

今回は、「雨月恋物語」や「わが心の龍馬」など再演を望む声が多い、ジェームス三木さんの作品とあって、しかも題材が「秀吉」とくれば、どんな型破りな作品に仕上がるのかと思っていましたが、意外と抑えてあるように感じました。
もちろん、今までにない演出は随所にみられました。里見さんも幕前でのシーンがあったり、
場の合間になべさんの解説が入ったり、そして秀吉登場のテーマ音楽があったり。
秀吉ならではの派手な衣裳やセットなど、物理的なみどころもいろいろとありました。
そして、なにより里見さんならではの愛嬌のある秀吉は楽しく拝見しましたが、やはり里見さんの品の良さと風格は良くも悪くも消すことは難しいですね。
3月の御園座公演では、まさに美しい二枚目を演じただけに、対照的なこの役に期待と不安を感じていましたが、もっと三枚目に仕立ててもよかったのかなぁと個人的には思いました。
今回も、ものすごい豪華な共演陣が個性ある演技を見せてくれました。音無さんとの共演はとても新鮮でしたが、息がピッタリなので驚きました。林さんの出番が少ないのがもったいないなぁと感じましたが、短いシーンでも家康の風格を見事に演じられていて、さすがだなぁと感じました。
それにしても、記念公演というと、同じ演目を各地で演じるのが普通ですが、里見さんの45周年の記念公演は、里見さんの新たな挑戦とも言えるべき、今までに演じなかった二枚目と三枚目を演じ、さらに、代表作の「長七郎」を明治座で演じてくださる。
これは、ファンにとってはとても幸せなことですね。