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小邦英雄 シナリオより
古田 求 脚本
金子良次 演出

 
【 出 演 】
 
金子市之丞
  ・・・・・里見浩太朗
 
おもん
  ・・・・・赤木春恵
 
中野碩翁
  ・・・・・長門裕之
 
三千歳
  ・・・・・岡まゆみ
 
片岡直次郎
  ・・・・・川崎麻世
 
河内山宗俊
  ・・・・・松山政路
 
八重
  ・・・・・柴 とも
 
おとし
  ・・・・・有輝知春
 
暗闇の丑松
  ・・・・・有川 博
 
渡辺保之介
  ・・・・・江幡高志
 
     他
 

◇ ものがたり ◇

 時は天保、徳川の武威衰えたりといえどもお旗本が羽振りをきかせておりました時代。 観梅の客を当て込み湯島天神で奉納試合を催したのは江戸一番の美男の顔役、金子市之丞。 暗闇の丑松の呼び込みや三千歳率いる深川芸者の踊りで大いに盛り上がりましたが、無頼の旗本赤鞘組の横ヤリや、 母おもんに見つかった直次郎がトンズラして滅茶苦茶です。そもそも遠く会津にいるはずの直次郎の母親が何故江戸に 現れたのか、といつめるとどうやら母に送った嘘八百の手紙が原因のようです。手紙を信じた母親はお目付に出世した息子の 姿を一目見ようと姪におとしを連れてやって来たのです。やさしい母の愛情に心を動かされた市之丞は、真実を知らせて悲しませる より江戸にいる間だけでも欺し続けようと仲間に提案します。はじめは銭にもならぬと冷ややかだった河内山宗俊も市之丞の熱意に 乗せられて、中野碩翁の空屋敷を拝借しようなどと話が膨らんで来ます。バレたら間違いなく首が飛ぶとビクつく直次郎らを励まし、 下見に出かけた碩翁の下屋敷で出会ったホームレスの茂作達も仲間に引き入れて、行列揃えて千住の木賃宿へ母を迎えに行くことと相成りました。
 今清盛と権勢並びない中野碩翁様のお屋敷を内緒で拝借した市之丞達はご母堂様をお迎えして、親孝行まっしぐら。 着慣れぬ衣装を着せられた母親おもんは下へも置かぬもてなしに、感謝の涙で袖はびしょ濡れ。 市之丞らは、一人一人に頭を下げて直次郎の行く末を頼み込む母の姿に親の愛の深さが身にしみる思いです。 宴も最高潮に達したころ、来るはずのない碩翁が現れ、大パニック。憮然と事態を眺め回す碩翁の手前を必死に取り繕う市之丞。 ところが直次郎の御同役というのを真に受けた母親は、日頃のお礼にと故郷の踊りを披露し始めます。 ままよと踊りに加わる市之丞や三千歳達。すっかり気をよくした母親はあろうことか碩翁まで踊りに引っぱり出す始末。 思わず乗せられてしまった碩翁は、去り際、金子市之丞に「家賃は・・・首ひとつ」と言い捨てて去っていったのでした。
 一夜明けた下屋敷の台所、市之丞と宗俊、丑松、三千歳が昨夜の余燼に浸っております。母の優しさ、暖かさに触れた四人は直次郎を 母親と一緒に会津に帰すことに決めました。 市之丞は嫌がる彼を説得し、この偽芝居の後始末にとりかかります。先ずかかった費用を工面しようと、かねて上州屋夫妻から頼まれていた 難問を解決して礼金百両を手に入れようと言うのです。
上野輪王寺宮の院代に化けた市之丞は旗本の赤鞘組の頭、水野忠邦の屋敷に乗り込み、上州屋の娘八重を親元に帰せと 申し入れます。治外法権をたてに拒む水野に、それでは中野碩翁様より老中に訴えると脅してようやく八重を手に入れますが、 居合わせた赤鞘組の北村大膳、竹内金次郎、渡辺保之介に偽者と見抜かれてしまいます。 ここは正念場と大見得切って虎口を脱した市之丞は、礼金で借金を払い、残りを直次郎達の餞別に持たせました。 別れを惜しむおもんは市之丞に自分を母親と思って一緒に会津で暮らそうと言います。優しい母の誘いに市之丞の心は 揺れますが、やはり江戸に残らねばならない。
 母子を送り出した市之丞、宗俊、丑松、三千歳は、いよいよ最後の後始末をと末期の酒を酌み交わします。 彼等の待つ下屋敷へ、水野と赤鞘組は女を奪われた屈辱を晴らそうと・・・。 碩翁も約束の家賃の取り立てに・・・。同じ頃、市之丞達の命の危機を知ったおもんの言いつけで直次郎も下屋敷に向かって 懸命に走っていました。